「webデザイナーはやめとけ」と言われる理由の一つとして、残業が多い、残業代が出ないなどの労働環境の問題があります。
しかし、筆者もwebデザイナーとして2社経験をしましたが、必ずしもwebデザイナー全員がブラックな環境とは限らないことを実感しています。
今回は筆者の経験だけでなく、現役デザイナー20名にアンケートし、webデザイナーの残業事情を調査してみました。
調査により、「残業が多いwebデザイナー」の実態が明らかになったので、就職・転職を考えている方はチェックしておきましょう!
webデザイナー20人に聞いた残業時間
現役webデザイナーに調査した、残業時間の平均時間は18.75時間でした。
また、残業時間ごとの割合は以下の通りです。
残業なし | 30% |
0~10時間 | 10% |
10~20時間 | 30% |
30~40時間 | 25% |
40~50時間 | 30% |
50~60時間 | 5% |
母数が20人と少ない理由もあると思いますが、webデザイナーが必ずしも残業が多いとは言い切れません。
Vorersによると、日本全体の残業時間の平均が約47時間ですから、他の業界と比べてもかなり少ない方になります。
残業がない人は3割もいますし、webデザイナーはホワイトな会社が多いのでは?という推測すらできそうです。
また、残業時間に関する面白い集計結果がツイートにありました。
前職、ブラックというか漆黒すぎて感覚鈍ってるのだけれど、、、
Webデザイナーの
9時出勤で22時の今から帰宅。
コレは、— ひよひな (@WBmx4r) February 4, 2020
このツイートのように、1日5時間残業=月80時間の残業が「超ブラックだよ!」という人が半数以上いるのをみても、ブラックなwebデザイナーもいるけど大半は違う、といった印象を受けます。
残業が多いwebデザイナーの労働環境とは?
では、先ほどのアンケートをもう少し詳しくみて、どのようなwebデザイナーが残業が多いのか、見てみましょう。
会社の業態別で見た残業時間
制作会社 | 19.8時間 |
事業会社 | 11時間 |
若干ですが、事業会社よりも制作会社の方が残業時間が多いという結果になりました。
ある月だけ残業60時間とかはありますが、全体で見ると感覚的には20~30時間あたりです。
雇用形態別で見た残業時間
正社員(フルタイム) | 17.8時間 |
正社員(時短勤務) | 0時間 |
派遣社員 | 0時間 |
時短勤務の正社員は、定時できっちり帰るため残業時間はありません。
また、派遣社員の場合、派遣先の会社は雇用主ではないので、悪い言い方をすれば派遣社員をこき使うとはできず、派遣元との契約通りの時間で働かせ、残業した分はしっかり残業代を支払わなければなりません。そのため、残業代を払いたくない会社であれば、派遣社員に残業をさせないように取り計らいます。
このような背景から、派遣社員の残業時間も0というのがアンケート結果からわかります。
したがって、雇用別で見るとフルタイムの正社員が最も残業が多いことになります。
会社規模別で見た残業時間
スタートアップ・ベンチャー企業 | 20時間 |
中小企業 | 19.6時間 |
大企業 | 0時間 |
アンケート結果を見ると、webデザイナーが所属する会社の規模は、中小企業やスタートアップの割合が非常に多く、中小企業と言っても従業員数が0~100人程度のかなり小さな会社がほとんどです。
大企業のwebデザイナーの母数が少ないこともありますが、大企業と比べると、中小企業、スタートアップ・ベンチャー企業のwebデザイナーの残業が多いことがわかります。
上記をまとめると、以下のような労働環境下のwebデザイナーは残業が多い傾向にあります。
残業が多いwebデザイナーの労働環境
- 制作会社勤務
- フルタイムの正社員
- 中小企業・スタートアップ
では、上記のような労働環境の会社は、なぜ残業が多いのでしょうか。
制作会社での実務経験がある筆者が、自分なりに原因を考えてみました。
ある特定のwebデザイナーの残業時間が多い理由
残業が多いwebデザイナーの労働環境では、以下のような「残業が多くなる原因」を孕んでいます。
残業が多くなる原因
- 納期が短い
- 人材不足
- webディレクターのスケジュール管理不足
- マーケティング的な提案力がない
- リテラシーの低いクライアントの無茶振り
- 下請け案件だから単価が安く、数をこなさなければならない
- みんな残っている
- 教育制度が整っていない
- 常に新しいデザイン・技術を身につける必要がある
「マーケティング的な提案力がない」に関しては、「こういうデザインにすることで売り上げが上がります!」といった根拠がないと、どうしてもビジュアル面での評価になってしまうため、クライアントが感覚的に納得するまで永遠にFIXしないなんてこともあります。
また、「教育制度が整っていない」ことが残業につながる理由は、未経験やスキルの浅い新人が、ろくな指導も受けずいきなり実務をやるため、社内でのフィードバックにかなり時間がかかってしまうからです。
研修期間やOJT(先輩が実務をつきっきりでサポート)の余裕がない小規模な会社にありがちです。

その分残業はいっぱいしましたけど...
webデザイナーは残業代がでない?
web業界ではみなし残業(給料の中に、あらかじめ一定時間分の残業代を含ませておく制度)を採用している会社が多く、webデザイナーはどれだけ残業しても一定の残業代しかもらえない場合が多いです。
アンケート調査でも、年収と残業時間の関連性を調べたところ、残業時間が多い=年収が多いわけではないようです。
残業なし | 312万円 |
0~10時間 | 275万円 |
10~20時間 | 393万円 |
30~40時間 | 290万円 |
40~50時間 | 450万円 |
50~60時間 | 350万円 |
Twitterでも残業代が出ないことに対する不満の声があったのでいくつか紹介します。
給料15万(手取りではなく全額)月15時間の残業代込休み日曜のみのWebデザイナーに面接行ったら「経験者初めて来た!採用!」と言われ試用期間3ヶ月で試用期間で辞めようと思ったけど辞めさせて貰えず5ヶ月時給800円こき使われた。定時にタイムカード切らされる系のとこ。
— ダイシ ポーター ブリッジズ (@daishi_san09) April 4, 2019
因みに、僕の妹もWEBデザイナーなのですが、地元の制作会社では珍しく、残業代にボーナスも出るというナイスな会社です。
お兄ちゃんが務めてた制作会社は「そうしきゅうがくじゅうごまんえん」で、日付けが変わるまで毎日働いてたんだぞう。
世の中には「ずるいしゃちょう」もいるんだよう。
— ヒカル / ウェブデザイナー@1on1レッスン (@design_hikaru) July 21, 2018
うちの娘
社会人になってようやく1年
WEBデザイナーの仕事で毎晩夜中まで働く(みなし残業で残業代はわずか)
月曜日からテレワークになり少しはストレス軽減できる?と聞いたら 監視されるとの事 今週は頭痛と難聴の症状
ムリと思ったら辞めていいよって言ってる— ころクロまま (@coronemama213) April 11, 2020
https://twitter.com/asakawaweb/status/1107516160868667392
なぜweb業界がみなし残業制度を採用するのかというと、営業や事務と違って生産性を数値に表しにくいというのがあります。
特にwebデザイナーのようなクリエイティブ系の仕事は、怠けているか否かなんて当の本人しかわからないので指摘のしようがないのです。
例えば、本当は30分で終わるようなデザインを3時間かけて作っても、「一生懸命つくりました!」と言ってしまえば、会社はそれを怠慢ではないと判断せざるを得ません。
会社側はその対策として、「一定の残業代しかつけないから早く作りなさい」といったことになるのです。
上記のアンケートを見て、webデザイナーの年収についてもっと詳しく知りたいと思った方は、別記事で詳しく調査解説をしていますのでチェックしてみてください。
webデザイナーが残業なしになる方法とは
残業が多いからといって、憧れのwebデザイナー を諦めるのはもったいないです。
webデザイナーとして働きつつ、残業を避けるには以下の手段を取るといいでしょう。
派遣社員・アルバイトとして働く
雇用形態別残業時間でも述べた通り、派遣社員は雇用関係上、残業をしなくていい場合が多いです。
また、webデザイナーのような技術職の派遣社員は、時給も高い(2,000~3,000円/時間)ため実は正社員より給料が高めだったりします。

当然ながら、待遇が良い分、採用の壁は高いです。
時給が高い派遣社員は即戦力を求められるため、実務経験が3年以上だったり、幅の広いスキルを持っている必要があります。
未経験の方や経験の浅い方で給料にさほどこだわりがなければ、まず時給の低い派遣社員かアルバイトで雇ってもらうのがベストかと思います。
事業会社で働く
事業会社は制作会社と異なり、自社のクリエイティブを担当します。
したがって厳密な納期やクライアントからの無茶ぶりのようなものはなく、制作会社よりは切羽詰まった環境ではありません。その分残業も少ないと考えていいでしょう。
しかし、事業会社だからと言ってマイペースで制作ができるわけではありません。特に小さなサービスを頻繁に生み出すような事業会社は、スピードが命といった場合もあります。

事業会社だから残業しなくていいだろうとは考えず、しっかり事業内容を考慮して会社を選びましょう。
フリーランスとして独立する
当たり前ですが、フリーランスになれば仕事の量は自分でコントロールが可能です。
もちろん、やることは制作会社と同じようなクライアントワークのため、納期の厳守やクライアントの要望に関してはコントロールができません。ある程度お仕事をもらえるようになると、自分に都合のいい案件だけを選ぶことができるので、労働時間の調整もできるようになるでしょう。
しかし、会社員ではやらなくてよかった税金周りの作業などはフリーランスでは必須なので、 webデザインだけを集中してやりたい!という人はあまり向いていないかもしれません。
そして何より、フリーランスとして生計を立てていくには、それなりの実績とスキルが必要です。
未経験からでもフリーランスになることは可能ですが、実績のない状態ではかなり無謀ともいえます。会社員でしっかり実力をつけて、将来的な目標としてフリーランスになることを目指しましょう。
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これからwebデザイナーになろうと考えている方は、まずどのような形で働くか、しっかり目標を立てることが大事です。
僕がおすすめする最初のキャリアとしては、残業は多いものの、会社員になることです。
その理由は以下の記事に書いてますのでぜひチェックしてみてください。
残業は悪いことばかりではない?
最初に入った会社は十数人の小さな制作会社で、残業や泊まりもあって
給料も安かったけどその分なんでも任せてもらえて
ひとりで働くのに必要なスキルが身についた大きな会社だったら
今の自分はなかったと思う— ささきよ@ひとり社長webデザイナー (@kesennumadesign) August 20, 2020
https://twitter.com/tanuko_neet/status/1296396737318277120
https://twitter.com/web_mitsuo/status/1292757269197672448
「必死で働いたおかげで成長できた」
「実力が身につくのなら残業しても構わない」
このような成長意欲のある方々は、残業をプラスに考えてます。
webデザイナーとして稼ぎたい、将来フリーランスとして独立したい、などの大きな目標がある方は、残業時間は覚悟して望んだ方がいいかもしれません。
一方、家事・育児のかたわらでのんびりやりたい、副業感覚でやりたいという方は、これまで述べたことをしっかり考えて会社選びをしましょう。
まとめ
もう一度、残業が多い傾向にあるwebデザイナーの労働環境をおさらいしましょう。
残業が多いwebデザイナーの労働環境
- 制作会社勤務
- フルタイムの正社員
- 中小企業・スタートアップ
必ずしも上記に当てはまるから残業が多いとは限りませんが、会社選びの一つの指標として視野に入れとくには十分ではないかと思います。
好きなことを仕事にできることもいいですが、残業が多すぎて好きだった仕事が嫌いになってしまうこともあります。
ワークライフバランスもしっかり考えて、好きな仕事を楽しくできれば最高ですね!
もしこの記事を見て、「転職しようかな...」と少しでも思った方は、以下にwebデザイナーに特化した転職サイトをまとめてますので、少しだけでも覗いてみてください。